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2021/04/23

シャトー・メルシャンでの研修を終えて・・・

甲州市役所観光商工課 ワイン・商工担当の雨宮です。


ワインギャラリー(売店)研修にて

私は甲州市役所に入庁し7年目となった今年度、本市のワイン振興に携わっていくうえでの土台をつくるため、シャトー・メルシャンでの研修を志願しました。

実際のところ、これまでワインとは縁がありませんでしたが、ワイン担当に配属なったことを機に、40を超えるワイナリーの方々と確かな信頼関係を築いていきたいと思うようになりました。しかし、知識も経験も乏しかった私に「まずは現場を知ること。じかに醸造家の仕事に触れることで、行政としての関わり方が見えてくる。」と上司にアドバイスをもらい、今回の研修が実現しました。市役所での勤務の傍ら、週3日シャトー・メルシャンでの研修を受けました。一年を通し、栽培、製造、包装、販売といったサプライチェーン全体を俯瞰的に見られるようにとのご配慮もあり、一連の知識をそれぞれの業務を週ごとに回りながら学ばせていただきました。

包装業務では、瓶詰め、ラベルの貼付け、検品、箱詰め等の作業がありますが、何気ない会話の中での「いくらワインが良くても、包装がしっかりしていないとお客様に手に取っていただけない」という言葉が印象に残りました。包装業務がいかに重要な工程であるか、また徹底した管理へのプライドが感じられました。


検品作業の様子(昼食後の睡魔にも負けず、一本一本丁寧に検品しました)

夏の栽培業務では、ワイン造りは「ブドウありき」といわれるように、天候の変化、芽の成長具合等にスタッフはとても敏感であり、良質なブドウをつくるための苦労を間近で感じました。また、契約栽培農家との房づくり等を通し互いの技術をフィードバックしながら、高品質なブドウづくりに取り組まれており、契約栽培農家さんとの良好な関係構築は大切なことだと思いました。


契約栽培農家さんとの房づくりの様子


豪雨の中、きいろ香の原料となる甲州ブドウの傘掛けをしました


乗用草刈り機も運転しました

桔梗ヶ原ワイナリー、椀子ワイナリーへ同行させていただいた際には、他産地の環境を五感で感じることができました。「勝沼は歴史の上に胡坐をかいている。」と、ときに耳にすることもあります。行政として地域とともに更なる産地形成に取り組まなければいけないと強く感じました。

9月、10月の仕込みシーズンは研修日を1日増やし、週4日としました。2020年の作柄は7月の長雨により例年になく病果が多く、「難しい年だった」と評価されることが多いと思いますが、手を掛かけられている園では病気が少なく、適切な管理・防除が大切であると感じました。さらに、収穫体験を通して、韮崎市や笛吹市、山梨市、長野県とそれぞれの圃場の違いや作柄の違いを見させていただきました。甲州市内においても個別の畑を想像しながら産地振興に取り組む必要があると感じました。


山梨日日新聞2020年11月3日27面掲載。


仕込み期間中の様子


2020シーズン収穫隊長&勝フェス実行委員長の岡村さんと。すでに今年の勝フェスに向けて色々と計画中とのことです。

醸造場内の作業では、黒ブドウの選果、タンク内のもろみをポンプを使って循環させるルモンタージュ、果皮や種子の塊(果帽)を手作業で攪拌するピジャージュ作業などを通して、ブドウがワインに変化していく様子を観察でき、貴重な体験となりました。また、仕込みシーズンの疲労感を身をもって体験しました。


ピジャージュ作業の様子

慌ただしい仕込み時期が過ぎ、落ち着きを取り戻してくると、樽の底に沈んだ酵母を攪拌し、ワインの味わいに厚みを与えるバトナージュ作業や亜硫酸の管理作業を中心にワインの育成管理を行いました。最適なワインの状態になるまで定期的にワインの状態をチェックしながら、色合い、香り、味わいなどを確認し、ゆっくりとワインを育てていくことを知りました。ワインはただ時間が流れることによって育成されるのではなく、人の関与も重要であるということを学びました。


ワインが育っていく様子を間近で見させていただきました

その他にも、ステンレスタンクの検定などの酒税法に関わる大事な作業も経験させていただきました。酒類の製造は酒税法のもとで許可されており、所轄の税務署へ必要な申請を行ったり、指導を仰いだりもしました。ワイン振興を図るうえでは、酒税法の知識も大事だと感じました。

冬場は冬季剪定も行いました。剪定する枝の見極めが難しく、実践ではハサミがなかなか進みませんでしたが、Ⅹ字剪定の他、返し枝のみを残すロケット剪定についても実践する中でご指導いただきました。剪定作業については特に経験の積み重ねが大切であると感じました。


冬季剪定後の畑

2月はスパークリングワインにおけるデゴルジュマン作業(瓶内二次発酵が終了した瓶内の酵母を手作業もしくは機械によって瓶口に集めて凍結させ、専用の栓抜きを用いて澱を取り除く作業)を実践し、瓶内二次発酵の過程を学びました。

研修の最後にはワインギャラリー(ワインショップ)での業務も組み込んでいただきました。お客様への対応、店内のPOPや陳列方法など実際の現場をくまなく見させていただき、一本のワインを購入していただく難しさ、また購入していただく喜びを感じることができました。あらためて、1本のワインがお客様に届くまでには、多くの人たちが関わり、試行錯誤していることを感じました。私自身も現場に立ち、一人一人のお客様に寄り添った丁寧な対応を心掛けました。3月の後半にはテイスティングが一部再開され、お客様のワインへの反応なども伺えたので良かったです。ここでも季節感を出したセットメニューなどお客様目線の演出があり、大いに参考になりました。

3月をもってシャトー・メルシャンでの1年間の研修を無事に終えることができました。世の中が大変な状況の中、シャトー・メルシャンの皆さまには本当にお世話になり、とても充実した日々を送ることができたと感じています。

4月より甲州市勝沼ぶどうの丘に配属となるため、この研修を通して学んだことを活かして、これからも地域の皆様とともに、日本のワイン産業発祥の地を盛り上げていきます。

ぜひ、ぶどうの丘にお立ち寄りの際は、お声掛け頂けましたら幸いです。


研修終了後の1枚(田村勝沼ワイナリー長と)

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