Report & News
2020/09/01

ワインの樽詰めと育成について

シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーの岡村です。
新型コロナウイルスが世の中に大きな影響を与え続けていますが、そんな環境下でも、私たちは日々ワイン製造を続けることができています。これも日頃からの皆様のご愛飲によるものだと思っています。ありがとうございます。
今回は、ワインの製造業務の一つである「樽詰め」の内容とその目的について簡単に説明させていただきます。


写真のステンレスタンクに入っているワインの容量は約65樽分に相当します。

「樽詰め」はその名の通り、ワインを樽に詰める作業のことです。樽に詰められたワインは、樽庫で約1年間の「樽育成」を行います。一般的には樽でワインを「熟成する」と表現しますが、シャトー・メルシャンでは「育成する」と表現します。フランス語で樽貯蔵を意味するエルバージュ(élevage)が、もともとは「(子供を)育てる」の名詞形であることに由来し、「樽育成」と表現しています。まさに「樽をゆりかごとしてワインを育てる」のです。

樽育成する理由は主に2つあります。

1つめはワインに含まれる成分の一種であるタンニンの質の変化を促し、ワインの品質に落ち着きを与えること、
2つめは樽由来の香味成分を付与し、ワインの香味と複雑さを向上させることです。

樽の効果は樽の素材や製造方法、大きさによっても異なってきますが、それについては別の機会でご紹介したいと思います。
樽育成で生じる変化には微量の酸素が必要であることが一般的に知られており、樽材のオークの微細な木目などから大気中の酸素がワインに供給されます。その供給量がワインの品質向上に都合がいいため、古くから保管容器として使用されています。一方で、樽に詰める前は大きなステンレスタンクで保管することが多いのですが、ふたの部分をしっかりと閉じるために、この場合ワインに酸素はほとんど供給されません。



地下セラー内に保管されたバレルの数々。よく見ると少しずつ違う樽が使用されています。

シャトー・メルシャンで使う樽の種類は大きさで大別するとバレル(barrel)とカスク(cask)があります。
ともに英語ですが、シャトー・メルシャンでは、バレルはそのままバレルと呼びますが、カスクの方はフランス語でフードル(foudre)と呼びます。
バレルにも様々なサイズが存在します。シャトー・メルシャンで使用するバレルは100L~500Lまでありますが、主に225Lと228Lの樽を使用します。総称して「小樽」と呼ぶこともあります。皆さんが樽をイメージする時は、「小樽」であることが多いと思います。


Fセラー内に並んだ10個のフードル。中は樽とワインの心地よい香りに包まれています。

シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーで使用しているフードルは3300Lの大容量サイズで、11樽 あります。2019年に、ワイナリーとしての機能を効率化するために、勝沼ワイナリーと鴨居寺セラーに分散していた赤ワイン育成用の10樽を一カ所に集約し新たに樽庫を建設しました。その名も「Fセラー」と言い、「foudre」の「F」に由来します。大きなフードルが10個並んでいる様は圧巻です!ワイナリツアーのうち「勝沼プレミアムツアー」で見学可能です。
写真のバレルとフードルの中には、2019年に収穫した、日本固有の赤ワイン用ブドウ品種「マスカット・ベーリーA」のワインが入っています(ともに私が樽詰めしました)。バレルとフードルの使い分けは、元のタンクの大きさだったり、目的の製品にふさわしい味わいを実現したりするために使いわけています。
これから約1年間の育成を経て、たくさんの樽から製品にふさわしい樽を一つ一つ味わいを確認しながら選抜し、ブレンドしていきます。
これらのワインの一部は「シャトー・メルシャン 山梨マスカット・ベーリーA  2019」にも使用する予定です。皆さんにお届けするのを楽しみにしつつ、これからもしっかりとワインを管理していきます!

0件の「いいね!」がありました。