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2024/03/15

ヴィンテージの始まりは冬季剪定から

シャトー・メルシャン 椀子ワイナリーの森田 亮一です。冬の椀子ヴィンヤードでは、「冬季剪定」という作業をしています。これは単にブドウの樹形を整えるためだけではなく、品質高いブドウを収穫するために欠かせない重要な作業です。剪定は、翌年だけでなく数年先のブドウ畑のパフォーマンスを左右し、樹はひとつとして同じ形の樹はないので、それぞれの樹にあった剪定をする必要があり、まるでジグソーパズルをやるような感覚で頭を使う作業でもあります。


圃場全景

総面積約30haに広がる椀子ヴィンヤードでは、12月から約4ヶ月をかけてこの剪定作業が行います。約7万本の樹を、熟考を重ねながら枝を切り落とし、樹形を整えていきます。常勤の圃場スタッフに加え、シルバー人材の方や上田市内で農福連携事業に取り組む事業所の利用者の方と一緒に作業を進めています。ブドウ品種や区画ごとの特性、望ましい収穫量、作業性などを考慮し、現在の椀子ワイナリーでは、黒品種は短梢剪定を、白品種は長梢剪定を採用しています。


短梢剪定

剪定に流れについては過去の記事で紹介していますので、ここでは私の長梢剪定における結果母枝選択の考え方にフォーカスして紹介します。

最初に、樹全体をよく観察し結果母枝の候補を絞ります。通常は昨年の剪定の際に、翌年の結果母枝となるように予備枝を確保しているので、予備枝からの枝の状態をよく確認します。ポイントはいくつもあります。枝が望ましくない方向に伸びていないか、適切な位置にあるか(幹から近くワイヤーより低い位置)、垣根の一番上のワイヤーの先まで成長しているか、適度な太さの枝か、十分な数の健康な芽があるか、傷や目に見える病気の感染がないかなど、細かい点もあげるとまだまだあります。ここで問題のない枝が確認できれば、結果母枝の選択は終了です。

次に、候補の枝がない場合にどのような枝を結果母枝にするか考えます。次の候補として考えられるのは、結果母枝以外から成長した不定芽と呼ばれる枝です。この枝が適切な位置にあり、先ほど確認した条件を満たしている場合、その枝を来年の結果母枝とします。

もし候補として適さないと判断された場合、去年の結果母枝から出た幹に一番近い枝を選びます。適切な高さにあり、状態が良ければ、その枝を採用します。

さらに、その枝さえも候補としてふさわしくない場合は、状況によって判断が異なります。ひとつは芽が成長したときに等間隔に配置できそうな芽がある枝を優先し、最も良い枝を結果母枝に選ぶこと。または、今年の長梢剪定を諦めて短梢剪定に切り替え、この1年をしのぎ、来年に長梢剪定で再構築するという方法も考えられます。剪定はそれぞれの剪定者や状況によって選択肢がいくつもある難しい作業です。


長梢剪定

とても細かい作業にフォーカスした一例でしたが、椀子ワイナリーではこのようにブドウ樹の剪定をひとつひとつ手作業で剪定を行い、品質良いブドウを育てています。ぜひ、グラスの中の奥深い味わいに、剪定という作業の成果を感じていただければ幸いです。

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