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2021/05/31

桔梗ヶ原ワイナリーの滓引き作業

こんにちは、桔梗ヶ原ワイナリーの森田です。塩尻市のぶどうは例年より少し早く萌芽しました。ブドウが動き出すと我々の栽培作業も本格化してきます。今年は一体どんなヴィンテージになるのでしょうか。いまから楽しみです。


桔梗ヶ原地区の萌芽の様子

さて、今回は栽培のお話ではなく、醸造作業の「滓引き(フランス語でスーティラージュ:Soutirage)」について紹介したいと思います。上の写真は、樽のオリを回収している様子です。

現在、2020年に収穫した桔梗ヶ原地区と片丘地区のブドウたちは、酵母によるアルコール発酵、そして乳酸菌によるマロラクティック発酵を終え、樽育成中です。アルコール発酵やマロラクティック発酵で活躍してもらった酵母や乳酸菌たちは、役目を終えると樽の下方へ堆積します。それを、ブドウ由来の多糖類、酒石酸、フェノール類、タンパク質などの沈殿物をふくめて「オリ」(フランス語でリー:Lie)と呼んでいます。この固形物であるオリと上澄みのワインを分けてやる作業を滓引きと呼んでいます。

目的は、ワインを清澄化させる事とワインに適度な酸素を供給することです。酸素と触れることによってタンニンの重合反応が進み、色素が安定化し、収斂味が和らぎ、味わいがまろやかになる、などの効果があります。また、ワインが酸欠状態になると発生する、温泉街で感じるような硫黄臭の発生を抑えます。


メルローのオリ

我々は下の写真のような冶具を使い、ポンプで樽のなかのワインをタンクに送ることでオリと上澄みのワインを分けています。チューブの先端部は数センチほどネジがついており、底にあるオリの高さに合わせて効率的に、オリを吸わずにワインを送ることができるようになっています。さらに、導管の一部が透明なガラスになっており、その透明な部分をライトで照らし、濁り具合を確認しながらワインをタンクへ移動させていきます。

1樽あたり2~5リットル程度をオリとして取り除いていきます。


ライトで確認しながらワインをタンクへ送っています

滓引きを重ねる毎にワインの清澄度が高まり、ワインによっては滓下げ処理や濾過をしなくても、十分に透明感のあるワインになります。つまり、時間をかけて自然と落ちるオリを取り除いていくと、ワインの良い部分までそぎ落とすことなく、製品にする事ができます。樽育成期間中は「時の流れ」が重要で、時間をかけることでワイン自身が自然とバランスを整えていきます。まさにワインが育ってくようです。

現在、樽に入っている「桔梗ヶ原シグナチャー」や「桔梗ヶ原メルロー」となるワインは樽育成が18~20ヶ月、瓶熟成2年を経て製品となってリリースされます。そしてリリース後も瓶の中でゆっくりと熟成が進んでいきます。数年前の収穫したぶどうをワインとして飲むことができる。そのとても息の長いワインという飲料に私はやりがいと、楽しみにしてくれているお客様の期待への責任を感じながら日々ブドウを栽培や醸造を行っています。

現在、樽育成中のワインは、ゆっくりと時間をかけて樽の成分とワインのアロマが調和していき、いまよりも複雑さのあるワインとなるでしょう。丹精こめて作られた桔梗ヶ原ワイナリーのワインを皆様へはやくお届けしたいですが、時間をかける事で良くなっていきますので、リリースの時まで今しばらくお待ちください。


「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー シグナチャー」、「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー」
 

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